握り締めた愛情の絹糸を綱にしよう

とある解離性同一性障害罹患者の随想録

10年間会っていない息子へ

今日は貴方の誕生日ですね、12歳になったんですね。
1回目の結婚を何歳の時にしたのかは思い出せないのに、貴方が生まれた日のことは昨日の出来事のように思い出せます。

生まれた瞬間に貴方は産声と同時におしっこをして私は泣き笑いしながら抱っこした日のことは忘れていません。
貴方の父親の記憶はうろ覚えでも、貴方が生まれた日の時刻も出生体重も身長もハッキリ覚えています。


だけど10年間一度も会えていないので12歳になった貴方の姿がまるで想像できません。
ランドセル姿を見ることなく今年度で小学校を卒業しますね、せめて写真だけでも見たかったです。


私が知っている赤ちゃんだった頃の貴方はもう居ませんね。

貴方の居住地や連絡先を知らなければ、どこの学校に通っているのかさえ、今でも知りません。

ですが私は日頃貴方の存在を忘れたまま過ごしています。
毎年誕生日に思い出す程度です。

そして申し訳ないけれど、もう貴方に会いたいとは思っていません。


冷たいでしょうか?酷いでしょうか?やはり母親失格でしょうか?

だけど10年間会いたくても会えない人をずっと想い続けるなんて、記憶が飛ぶ病気を抱えている私には土台無理なことでした。
大切なものを忘れないように覚えていられるようにしていたはずだったのに、貴方への想いさえも忘れてしまいました。


貴方には貴方の人生があるように、私も私の人生があります。

血の繋がりはあれど私達が親子であった時期は1〜2年しかないので、せめて貴方を1人の人間として今後の人生が幸多きものになるよう願うことしかできません。

もうこれしか選択肢は残っていないし、それがお互いの為になる方法だと私は考えています。

 

最後に、息子へ。

12歳の誕生日おめでとう。
小学生最後の年ですね、小学校は楽しかったでしょうか。
貴方には伝えたいことが多すぎて何も言葉になりません。
これからはお互いそれぞれの道を歩んでいきましょうね。
今後も変わらず貴方の幸せを願っています。
とてもとても、大切な人でした、愛していました。

母親より。

 


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