握り締めた愛情の絹糸を綱にしよう

とある解離性同一性障害罹患者の随想録

精神病の人間はクズだと本気で思っていたあの頃〜とある男性看護師の話〜

最近、訪問看護に来てくれていた男性看護師のことをよく思い出します。

その男性は精神科1本で看護師を目指して働き続けている人です。

以下、桧山さんと仮名します。


訪問看護の利用を始める前に精神科1本を志望して看護師になった男性が来てくれますよと教えてもらっていました。

その男性が桧山さんでした。

桧山さんに会う前からどうして精神科1本で看護師になろうと思ったのかすごく不思議でした。
なので初回訪問で来てくれた時に尋ねてみた時の話です。

その時桧山さんが言っていた話を、何回も何回も、思い出します。

 

 

桧山さんのお母さんは看護師だったそうです。
なので桧山さんも中学生の頃には「自分も看護師になる」と決めていたみたいです。

桧山さんが自分も看護師になりたいとお母さんに伝えたところ、お母さんが勤務する精神病棟に訪問することになったそうです。


初めて精神科病棟に行った時はすごく怖かったと言っていました。

やっぱり桧山さんも、当時は精神病の人っておかしい人達なんじゃないか、頭が変な人達なんじゃないか、危ないことをする人達なんじゃないか…。

そんなことを思っていたみたいです。
これも桧山さんは全部正直に話してくれました。

 

でも実際精神科病棟に入院してる患者さんとお話をしてみると、彼らは根っこがとっても純粋なんだピュアなんだと感じたみたいです。

「精神科で看護師として働きたい」

精神病棟の患者さん達と接する内に、精神科志望の看護師になろうと決めたそうです。

だから今でも精神科1本で働き続けている、桧山さんはそう言っていました。

 

 

当時、私は桧山さんが言ってたことが全く理解できませんでした。


精神病の患者さんは根っこが純粋、ピュア…?


精神病に罹る人は、心が弱くて意思も弱くて人間性も終わってて何でも病気のせいにして傍若無人に振る舞うことを正当化する自分勝手な人間、最低な人間、ゴミクズ人間でしかないよ。

私自身を含めて精神病の人達のことをそう思っていました。


"精神病患者さんは根っこが純粋、ピュア…。"


信じられない、そんなわけないじゃん。
自分勝手で最低なゴミクズの精神病患者の人達しか見たことないよ。

そんな人達が純粋でピュアなら、じゃあ私も純粋なの?ピュアなの?
そんなわけないじゃん、私もあの人達と同じ最低なゴミクズ人間だよ。

 

当時は私自身のことも他の精神病患者さんのことも、本気でそう思っていました。

 

だけど桧山さんの話を数年経って思い出してみると、今は彼の言いたかったことがわかるようになりました。

Twitterを再開して精神疾患を患っている人達と接するようになって、桧山さんの言っていたことがやっとわかってきたんです。

 


「やっぱり精神病にかかってしまう人達は根っこが純粋でピュアすぎて、理不尽なこの世の中に耐えきれなくなった結果病気になってしまったんだ。」

 

「自分を蔑ろにしてまで人に優しくすることを優先し続けてきたから、自分が崩壊して病気になってしまったんだ。」

 

「精神病の人達は決して頭のおかしい異常者なのではなく、純粋すぎてピュアすぎるが故に自分自身の葛藤ですら理不尽に思えて、咀嚼も飲み込むことも吐き出すこともできずに苦しんでいる人達なんだ。」

 


今なら、そう思います。

私自身を含め精神病の人達全員にそう思います。

 

 

今まで精神病の人達に「自分勝手で最低なゴミクズ人間」なんて酷い事を思っていた私自身を、とても恥ずかしく思います。


本当にごめんなさい。


他の患者さんに対しても、私自身に対しても。
本当に、本当に、ごめんなさい。

こんな酷いことを考えていたなんて許されるとは思っていませんが、せめて懺悔することだけは許して欲しいです。

本当に、申し訳ありませんでした。

 

 

精神病になってしまう人は、壮絶な人生を歩んできた人達が沢山います。

世の中に偏見や差別もまだまだ多いです。

それでも精神病罹患者も人間です。
精神病があっても立派に生きてる人間です。


理解しろとは言いません。
偏見も差別もするなとも言いません。


せめて精神病罹患者を、毎日病気と闘いながら必死に生きている1人の人間として、見てくれると嬉しいです。